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逝ってしまった山爺(6)

数年前のこと
イ爺の森の近くを歩いていたら
森の中で妙な物(下の写真)を見つけた。
一本の檜にアルミ製の棒の様な物が立て掛けてあったのだ。
近寄って見ていたら
「これ、良いじゃろう」と
嬉しそうな顔をしてイ爺が話しかけて来た。
初めて見る物だったので
「こりゃ、何ね?」と問いかけると
「梯子なんじゃ!一本立ちの木に登る時には便利でのう〜
 こうやって使うんじゃ」
と棒を持ち、何やら操作すると
棒の横に踏桟の様な横棒が出て来た。
更に最頂部のフックが木の幹を挟んだ。
「なぁ!こうすりゃ梯子がズレんから、この位細い木でも安全に登れるとじゃ」
とイ爺は嬉しそうだ。
「昔は登れとったがの〜。年取って足が衰えたのじゃろうか?
 木登りが恐ろしゅうなってのう〜。これを買うた〜」
とまるで子どもの様に満面に笑みを浮かべて満足げだった。
見るとイ爺の森の檜はどれも枝打ちが行き届いている。
と言う事は爺はこの木に登って枝打ちをしたのだろうか?
「この森の木全部爺さんが枝打ちしたんね?」と等と
爺はニャリと笑うだけで返事をせず
「やれ、仕事に掛かろうかの〜」と言い残し
森の奥へと消えて行った。
その日も山爺は元気そのものだった。
逝ってしまった山爺(6)_c0355335_19521914.jpg

by terujiinoyamagoya | 2019-09-08 19:52
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